黄金世紀の文学的マドリードを散策する

文学と演劇の歴史にゆかりのある家々、教会、タベルナ(酒場)をめぐる都市ルート

マドリードの街には、数世紀にわたる文化史をわずか数時間でたどることができる文学的遺産が息づいています。約2.6キロメートルにおよぶ「ラス・レトラス地区(文学者の街)」のルートでは、偉大な作家たちが暮らした家々や、洗礼式(または埋葬)が行われた教会、文学史を変えた酒場や出版社を訪ね歩くことができます。まるで小説の舞台に迷い込んだかのような体験ができるでしょう。 セルバンテスと街に残るその記憶 ミゲル・デ・セルバンテスの足跡は、「ラス・レトラス地区」の随所に残されています。トリニタリアス・デスカルサス修道院(跣足三位一体修道会)には彼の遺骨が安置され、フアン・デ・ラ・クエスタ出版社では1605年、『ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ』初版の刊行が記念されています。 この散策ではサン・セバスティアン教会にも立ち寄ります。そこにはセルバンテスの死亡証明書が保管され、ロペ・デ・ベガの遺骨も眠っています。この教会ではティルソ・デ・モリーナ、ベナベンテ、モラティンらが洗礼を受け、ララやベッケルといった作家の結婚式も執り行われました。

: アトーチャ通りにあるサン・セバスティアン教会は、1969年に文化財(記念碑)として指定されました。
: アトーチャ通りにあるサン・セバスティアン教会は、1969年に文化財(記念碑)として指定されました。 © Shutterstock

作家としての人生の舞台 ロペ・デ・ベガ博物館(旧邸宅)は、劇作家が数々の名作を執筆した家庭的な雰囲気を今に伝えています。館内には私物や原稿が展示されているほか、かつてこの地区が文学の中心地であった時代の静けさを彷彿とさせる庭園も併設されています。 ケベード邸は、彼とゴンゴラとの確執を伝える場所として知られています。また1827年創業の老舗酒場「カサ・アルベルト」では、文学や演劇にまつわる逸話や座談会の記憶が今も息づいています。文学遺産の旅は、世界最古の現存劇場とされる「テアトロ・エスパニョール(スペイン劇場)」で締めくくられます。

テアトロ・エスパニョールのメインホールには、中央の座席エリアと3階層を合わせて735席があり、見事な音響効果を誇ります。
テアトロ・エスパニョールのメインホールには、中央の座席エリアと3階層を合わせて735席があり、見事な音響効果を誇ります。 © Teatro Español | Vanessa Rabade

このルートを歩けば、マドリード中心部がまるで野外博物館のように変貌します。街路の一つひとつが、街を文化の象徴に押し上げた作家たちの足跡を語りかけてくれるのです。住民も旅行者も、文学の都マドリードの歴史を身近に感じることができるでしょう。 この文学ルートは、首都の文化的中心地、プラド通りとレティーロ公園周辺に位置しています。この一帯は「芸術と科学の景観」として知られ、ユネスコ世界遺産「光の景観(Paisaje de la Luz)」に登録されています。