味覚、伝統の技、そして風景を楽しむバレンシアのアグリツーリズム。
見本市や博物館、農業ルートを通して、バレンシア州の多彩な生産文化に触れる
バレンシア州のアグリツーリズム・マップを手に、オリーブオイル工場やワイナリー、果樹園、養蜂場、稲田、チーズ工房、漁港などを訪ねてみよう。見学や試食、ワークショップ、ルート巡りなどを通して、農業や漁業によって生み出される多様な産物の価値を知ることができる。大地と海の恵みを生かした味わいは、地域のアイデンティティや受け継がれてきた知恵、産業を支える風景、そして今も息づく職人技と深く結びつき、身近で五感を刺激する体験へとつながっている。 アグリツーリズムを通して見えてくるのは、この地域のもうひとつの姿だ。それは、農業や漁業、畜産と人々との関わりを形づくってきた生産者や農村コミュニティ、さまざまな仕事に目を向ける旅である。魅力は単に風景を眺めることだけではない。食卓に並ぶものが、どのように栽培され、収穫され、製造され、加工されているのかを知ることにある。 バレンシア州では、オリーブオイルツーリズムやワインツーリズムから、養蜂、柑橘類、チーズ、トリュフやキノコ、米、チュファ、クラフトビール、漁業体験、その他の農産物まで、土地の恵みを味わう11のテーマが紹介されている。それぞれの体験を通して、生産方法や農場、職人の手仕事によって生み出される商品に触れることができ、ガイド付き見学やエクスカーション、試食などのほか、生産地に関連した宿泊体験が用意されているものもある。 樹齢数百年を超えるオリーブの木々やオリーブオイル工場を訪ねるルートでは、エクストラバージン・オリーブオイルが旅の軸となる。専門の博物館を巡ったり、収穫シーズンに行われる作業を見学したりすることもできる。ワイナリーでは、ブドウ栽培の文化に触れながら、テイスティングやワインとのペアリングメニュー、ブドウ畑に囲まれた宿泊などを楽しめる。アリカンテ、バレンシア、カステジョンの各県にさまざまな施設があり、なかでもウティエル-レケーナ地方には多彩なワインツーリズムの魅力が集まっている。さらに、クラフトビールや蒸留酒の文化もこの味覚の旅に加わり、醸造所や蒸留所を訪れながら、それぞれの製造工程にまつわる体験を楽しむことができる。

また、農産物の生産地をめぐる旅では、農園や果樹園も大きな魅力となる。タベルネス・ブランケス、アルボラヤ、アルマセラでは、チュファ(タイガーナッツ)が栽培から加工までの工程を経て、昔ながらの製法による手作りのオルチャータへと生まれ変わる。また、柑橘類の果樹園では、散策しながら、さまざまな品種のマンダリン、オレンジ、レモンについて学んだり、バレンシアの柑橘栽培の伝統を知るテイスティングに参加したりできる。バレンシアのアルブフェラ湿地帯や、アルファファル、クジェラ、スエカなどの町では、米作りをテーマにしたボート遊覧やバレンシアの伝統家屋「バラカ」での体験、さまざまな米料理の調理を学ぶアクティビティなどが楽しめる。 より臨場感のある体験を求めるなら、実際に生産者の手仕事に触れられるアクティビティがおすすめだ。養蜂ツーリズムでは、ミツバチの世界を知り、養蜂箱を見学したり、ワークショップに参加したり、さまざまな種類の蜂蜜を味わったりできる。トリュフやキノコをテーマにした体験では、プエブラ・デ・ベニファサル、モレージャ、ビスタベジャ・デル・マエストラスゴなどを訪れ、専門の訓練を受けた犬とともにトリュフやキノコを探すガイドツアーに参加できる。一方、漁業ツーリズムでは、港の仕組みや伝統的な漁業の仕事、海の風景に触れながら、野鳥観察や、この体験と連携したレストランでの食事も楽しめる。 祭りや文化遺産も、旅の楽しみをさらに広げてくれる。アヨラでは「初採蜜祭」が開催され、モンタネホスでは職人が手がけるチーズの紹介や実演、ワークショップなどが行われる。また、カウディエルでは、町を代表するサクランボ祭りが開催される。これらの地域には、バレンシア州ブドウ・ワイン博物館「ボデガ・レドンダ」、アルマセラの農業博物館、トレントの「ジュセップ・フェリス・マーチ・ラ・ウエルタ・スール地域博物館」、モンテサとセゴルベのオリーブオイル博物館、ビコルプのエコミュージアムなど、農業や食文化にまつわる施設も点在している。 生産地の風景そのものにも、それぞれの物語がある。シエラ・デエスパダンでは、コルクガシの生い茂る森でコルク生産の風景を見ることができる。また、マスカット種のブドウを乾燥させるために使われた伝統建築「リウラウ」が今も残されているリウラウのルートは、ベニサ、ベルヘル、パルセント、ハベア、ロトバなどの町を結び、徒歩、自転車、車などで農村の文化遺産を身近に感じることができる。 アグリツーリズムを通して、バレンシア州の特産品、風景、そしてそこで受け継がれてきた仕事に触れることができ、農村と海辺の文化に根ざしたさまざまな体験は、旅人をこの地域の本質へと導くことだろう。 所在地 バレンシア州はスペイン東部、地中海沿岸に位置する。主要な道路アクセスにはAP-7、A-7、A-3があり、バレンシア空港、アリカンテ=エルチェ・ミゲル・エルナンデス空港、カステリョン空港がある。また、バレンシア、アリカンテ、デニアには港があり、高速鉄道や長距離列車によるアクセスも整っている。