スペインの伝統に触れる、家族で過ごすクリスマス

歌声、チョコレート、パレードなど、スペイン各地でイベント満載のクリスマス

クリスマスの伝統行事は、家族でスペインを旅する魅力的な方法のひとつだ。この時期、歴史的建造物や街並みは歌声や祝祭に彩られ、職人の技によってチョコレートが趣向を凝らした作品へと姿を変え、通りにはイルミネーションが輝き、散策を楽しむ人々を誘う。12月から1月初旬にかけての旅では、それぞれの街や村で異なるクリスマスの過ごし方に触れながら、家族との時間を楽しむことができる。 セビージャでは、歴史的な空間を舞台にコンサートや祝祭が繰り広げられ、音楽と荘厳な雰囲気に包まれた街の姿を楽しめる。12月8日の無原罪の御宿りの祝日には、セビージャ大聖堂で子供たちによる伝統舞踊「セイスの舞」が披露される。前日には、大学の楽団「トゥナ」がトリウンフォ広場にある無原罪の聖母像の前で歌を披露し、祝祭ムードを盛り上げる。 マヨルカ島では、12月24日の夜に「シビラの歌」という独特の伝統儀式が行われる。2010年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されたこの儀式は、クリスマス・イブの夜のミサで、少年少女が剣を掲げて大聖堂内を行進し、ろうそくを手にした侍者たちがその後に続く。グレゴリオ聖歌をルーツとする旋律とオルガンの音色に包まれながら行われるこの儀式は、島の記憶とアイデンティティに触れる特別な体験となる。 ベレン巡りも、伝統文化を楽しみながら子どもたちの好奇心を刺激するだろう。コルドバ県 ルテでは、なんと約1,500キロものチョコレートを使ってベレンが作られる。パティシエたちは4か月をかけて「チョコレートのベレン」を制作し、イエスの生涯の場面や寺院、さまざまな人物をチョコレートで再現する。毎年異なるテーマが設定され、その創造性あふれる作品は年齢を問わず訪れる人々を驚かせる。 ジローナ県のいくつかの農村では、住民自らが主役となる「生きたベレン」が40年以上にわたって開催されている。ジョアネテスでは、かつての職人仕事や農作業など約50の場面を巡るコースが設けられ、40頭を超える家畜も登場し、子どもたちを楽しませる。一方、バスカラでは、光と音の演出とともに、300人を超える出演者による壮大な上演が行われる。 クリスマスの食卓を囲んでの味わいにも、知る楽しみがある。ヒホナでは、「トゥロン博物館」で、昔の機械や包装、製造技術を通して、トゥロンやマサパン作りの伝統を知ることができる。見学後にはショップで試食も楽しめる。マドリードの「Casa 1880」では、アーモンドの香りや原材料、道具などをたどりながら、この伝統菓子の歴史を知るセルフガイドツアーを用意している。五感を楽しませながら、スペインの産業と食文化の歴史に触れられる二つの立ち寄りスポットだ。

ヒホナのトゥロン博物館では、1960年代の創設当時の背景や、トゥロンの製造に必要な技術、その文化遺産としての価値について知ることができる。
ヒホナのトゥロン博物館では、1960年代の創設当時の背景や、トゥロンの製造に必要な技術、その文化遺産としての価値について知ることができる。 © Turismo Comunitat Valenciana

マドリード、バルセロナ、マラガ、ビゴなどでは、華やかなイルミネーションが夜の街の表情を一層引き立てる。なかでもビゴでは、2026年のクリスマスイルミネーションとして、約500の通りに1,200万個を超えるLEDライトが設置され、数千もの装飾モチーフやイルミネーションツリーが街を彩る。クリスマスマーケットやベレン、クリスマスの装飾に彩られた街を歩くひとときが、夜の街を楽しむうえで欠かせない体験となる。

クリスマスシーズンのビゴでは、500の通りが1,200万個を超えるLEDライトと7,000以上の装飾モチーフで彩られる。
クリスマスシーズンのビゴでは、500の通りが1,200万個を超えるLEDライトと7,000以上の装飾モチーフで彩られる。

アルコイでは、1月になると、三賢王を待つ人々の姿が特に印象的だ。1月5日に行われる三賢王のパレードは、1885年から途切れることなく開催されており、スペインで最も古い三賢王のパレードで、全国観光行事にも認定されている。 小さな羊飼いたち、王の使者による告知、そして東方の三賢王メルチョール、ガスパール、バルタサールの到着が独特の一連の光景をつくり出す。なかでも、従者たちが長い階段を上ってバルコニーや窓まで行き、子どもたちにプレゼントを届ける姿は、このパレードならではの光景だ。